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2013年6月30日日曜日

【誤訳】パーソンズの「社会的秩序」概念

はてなより、少し加筆修正の上、転載。

以下は、パーソンズが秩序概念について一般的に述べている部分で、けっこう重要な箇所です。

したがって社会秩序は、それが科学的分析を受けつけるものであるかぎり、つねに事実的秩序であるのだが、しかしそれが長く維持されるとすれば、なんらかの規範的要素が効果的に機能しなければ決して安定しないものである。


タルコット・パーソンズ,稲上毅・厚東洋輔訳,『社会的行為の構造 1』,木鐸社,152頁

しかし、この太字の部分は誤訳です。原文は次の通り。

Thus a social order is always a factual order in so far as it is susceptible of scientific analysis but, as will be later maintained, it is one which cannot have stability without the effective functioning of certain normative elements.


Talcott Parsons, The Structure of Social Action, The Free Press, p. 92

この「maintain」は「維持する」という意味ではなく、「主張する」という意味。つまり、「as will be later maintained」というのは「後述するように」と訳すべき挿入句です。

「長く維持されるとすれば」とあると、じゃあ短期的ならOKなの? という疑問が湧いてきます。このあたりは、「安定性」という概念の(そして功利主義的秩序は不安定(precarious)だという議論の)解釈にも密接に関わってくるので、少し細かくこだわりたいところです。




高城和義,『パーソンズの理論体系』,日本評論社,48頁も、この誤訳をそのまま継承しています。以下、他の誤引用も見つけたら載せていきます。

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