ルーマン読みながらドイツ語勉強(24)[1-3]
Das ist erforderlich, um den Begriff für eine logisch korrekte und kontrollierbare Verwendung vorzubereiten, damit ein jeder versteht, was der andere mit ihm meint.
まず für は「~のために」とか「~に向けて」の前置詞で、要するに英語の for です。そしてこの für は[4格支配]です。
したがって、この後に付いている名詞 Verwendung は[女4格]で、そのことを表示するために不定冠詞が eine になっています。この機会に、[女]の不定冠詞の格変化を、定冠詞の格変化と並べて確認しておきましょう。
[女1格]die | eine
[女2格]der | einer
[女3格]der | einer
[女4格]die | eine
[男](および[中])と違って、[女](および[複])の場合は、格変化を考えるときに定冠詞と不定冠詞の違いを考慮する必要がありませんから楽ちんです。
次に、この例では不定冠詞の後に形容詞が付いて名詞を修飾しており、それに伴って形容詞の語尾にも変化があります。形容詞の語尾の格変化は、それより前の要素(冠詞とか)が積極的に格を表示しているかどうかで変わってきます。つまり、前の要素が先に格を積極的に表示していれば、形容詞の語尾は識別能力の著しく低い、やる気のな~い語尾になります。それに対し、格を積極的に表示する要素が前に付いていない場合は、形容詞の語尾はここは自分が頑張らねばと思って、積極的に格を表示するような変化を見せます。
さて上の例では、形容詞より前の要素である不定冠詞 eine が積極的に[女4格]を表示していますから、形容詞自身はやる気のない語尾になります。これを[弱語尾]と呼びます。すなわち korrekte と kontrollierbare の -e は、一見すると eine の -e と同じに見えますが、実は[弱語尾]なのです。
ここで[弱語尾]がどれだけ識別能力の低いやる気のない語尾であるかを示すために、[性数]×[格]=4 × 4 = 16 通りの[弱語尾]を列挙してみます。
[男1格] -en [中1格] -en [女1格] -en [複1格] -en
[男2格] -en [中2格] -en [女2格] -en [複2格] -en
[男3格] -en [中3格] -en [女3格] -en [複3格] -en
[男4格] -en [中4格] -en [女4格] -en [複4格] -en
おわかりいただけたでしょうか。そもそも -e と -en しかなく、16分の11が -en です。どっちかわからなければ -en としておけば正解率はほぼ7割です。
もう少し体系的に考えたい場合は、次の「気持ち」を踏まえておくといい感じです。
(1)ほんとは全部 -en にしたい気持ち
(2)でも[1格]と[4格]は -e にしたい気持ち
(3)やっぱり[複]は全部 -en にしたい気持ち
(4)やっぱり[男]は[1格]と[4格]を別のにしたい気持ち
この順番で「気持ち」を慮ってあげると、上の表ができますのでぜひ試してみてください。
このうち(3)は既出の原則「[複]は -en と縁が深い」のまた一つの現れと言えます。また(4)は定冠詞や不定冠詞の格変化に遡ってみるともう少し感覚がわかるかと思います。そこで、定冠詞と不定冠詞の格変化を列挙してみます(ただし[複]には不定冠詞が付かないので一人称単数の所有冠詞 mein で代替します)。
[男1格] der [中1格] das [女1格] die [複1格] die
[男2格] des [中2格] des [女2格] der [複2格] der
[男3格] dem [中3格] dem [女3格] der [複3格] den
[男4格] den [中4格] das [女4格] die [複4格] die
[男1格] mein [中1格] mein [女1格] meine [複1格] meine
[男2格] meines [中2格] meines [女2格] meiner [複2格] meiner
[男3格] meinem [中3格] meinem [女3格] meiner [複3格] meinen
[男4格] meinen [中4格] mein [女4格] meine [複4格] meine
[1格]と[4格]を比較すると、定冠詞でも不定冠詞でも[男]以外は[1格]と[4格]が同じです。逆に言うと[男]だけ[1格]と[4格]が違います。[男]には[1格]と[4格]を別のにしたい気持ちが常に働いていて、それが[弱語尾]の場合にも作用しているということです。
他方、(2)でことさらに[1格]と[4格]が出てきているのは、[男]以外では[1格]と[4格]を同じにしたい気持ちが働いていることの残響とでも言えるかもしれません。
いずれにせよ、 korrekte と kontrollierbare の -e は[女4格]の[弱語尾]だということです。
この文での形容詞の使い方については、まだ述べることがありますが、今回もすでに長くなってしまったのでまた次回に回します。
今回のまとめ
- für は英語の for で[4格支配]
- 形容詞の格変化は、それより前の要素が積極的に格を表示しているなら[弱語尾]
- [弱語尾]は -e と -en しかなく、 -en にしておけば7割の確率で正解
- [弱語尾]の正確な分布は、(1)全部 -en にしたい、(2)[1格]と[4格]は -e にしたい、(3)[複]は全部 -en にしたい、(4)やっぱり[男]は[1格]と[4格]を別のにしたい、という4つの[気持ち]を尊重してやれば完成する
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